活動報告

粒子加工技術分科会 報告

2026年7月24日

  • 講演1_武州製薬(株)上野様のご講演
    講演1_武州製薬(株)上野様のご講演
  • 講演2_城西大学薬学部 江川先生のご講演
    講演2_城西大学薬学部 江川先生のご講演
  • 講演3_明治薬科大学分子製剤学研究室 深水先生のご講演
    講演3_明治薬科大学分子製剤学研究室 深水先生のご講演
  • 講演4_アルフレッサファーマ(株)高橋様のご講演
    講演4_アルフレッサファーマ(株)高橋様のご講演
  • 講演会写真
    講演会写真
  • 集合写真
    集合写真
2026年6月26日、2026年度第1回の見学・講演会を武州製薬株式会社川越工場、ウエスタ川越にて下記の要領で開催しました。同工場は、医薬品受託製造専門企業として数多くの顧客より治験薬・医薬品の製造・包装業務を受託しており、現在、3つの工場と2つのパッケージングセンターを拠点に、委託元との密接なパートナーシップのもと、医薬品の安定供給と信頼性の高い製造体制の構築に取り組んでいます。「世界のヘルスケア産業の発展と人々の健康のために」をミッションに掲げ、GMPに準拠した製造・試験体制のもと、製造技術および品質保証レベルの向上、納期遵守、コスト改善など多岐にわたる業務を遂行しています。GMP認証においては日米欧三極の査察をクリアし、委託元を通じて56カ国への供給実績を有し、今回の見学会では、品質管理体制や製造現場の取り組みの理解のため、メイン工場である川越工場の製剤エリア、再生紙エリア、物流エリアを見学しました。午後の講演会は、会場を「ウエスタ川越」に移して開催し、4名の講師より最新の研究・技術について講演いただきました。下記に報告いたします。
 
『工場見学』(見学場所:武州製薬株式会社川越工場)
 
開会の挨拶:粒子加工技術分科会 代表幹事 根本源太郎氏
 
『講演会』(講演会場:ウエスタ川越)

開演の挨拶:粉体工学会 製剤と粒子設計部会 竹内洋文氏
 
講演1 「武州製薬におけるDX推進」 武州製薬株式会社 DX戦略部 上野拓真 氏
武州製薬株式会社では、医薬品受託製造(CDMO)事業において、ベテラン技術者の退職による知識・経験の喪失を「技術の崖」と捉え、その解決策としてDXを推進している。特に「省人化」ではなく「活人化」を理念に掲げ、AIエージェントを活用した「知識の民主化」に取り組んでいるとのことであった。SOPや逸脱報告書、GMP規制文書など大量の情報を自然言語で検索・活用できる「SOPナビ」「逸脱ナビ」「GMPプロフェッショナル」などを開発し、ベテランの暗黙知を組織資産として共有している。これにより、教育期間の短縮や品質の安定、競争力の維持を実現し、将来的には業界全体の知見共有や技術力向上にも貢献することを目指している。
 
講演2 「ホウ素を利用した血糖値応答性インスリン製剤の開発」 城西大学 薬学部 薬品物理化学研究室 江川祐哉 氏
城西大学の江川祐哉教授より、糖尿病治療における低血糖リスクの低減を目指し、ホウ素化合物を利用した血糖値応答性インスリン製剤の開発について講演していただいた。ホウ素修飾したインスリン(BPmoc-Ins)は、グルコースオキシダーゼ(GOx)が血糖に応じて生成する過酸化水素によって活性型インスリンへ再生される仕組みを持つ。当初は溶解性の低さが課題であったが、シクロデキストリンによる分散化や、インスリンアスパルトを用いた完全溶解型プロドラッグ(BPmoc-Ins-Asp)の開発により改善された。細胞実験や糖尿病モデルラットでの試験では、高血糖時に選択的な血糖降下作用を示し、通常血糖時の過度な低血糖を抑制する可能性が示された。将来的には、膵臓のように長期間にわたり繰り返し血糖値へ応答する粒子・カプセル型製剤の実現を目指している。
 
講演3 「医薬品コクリスタルの製剤設計と工業化検討」 明治薬科大学 分子製剤学研究室 深水啓朗 氏
明治薬科大学の深水啓朗教授には、医薬品コクリスタルの製剤設計と工業化について講演いただいた。コクリスタルは原薬とコフォーマーが非共有結合で形成する結晶であり、難水溶性原薬の溶解性やバイオアベイラビリティ(BA)の向上が期待される。一方で、溶解後に生じる過飽和状態をいかに維持するかが重要であり、コクリスタル化と製剤設計の組み合わせによる相乗効果が有効であることが示された。また、近年は実用化や特許出願が増加しており、コクリスタルは新たな原薬設計手法として注目されている。工業生産では晶析法、溶融押出法、噴霧乾燥法などが活用され、製造条件の最適化が進められている。さらに、低周波ラマン分光法を用いたリアルタイムモニタリング技術により、造粒や製造工程中のコクリスタルの生成・安定性評価が可能となり、品質保証や製造プロセス管理への応用が期待される。
 
講演4 「小児製剤を指向したフィルムコートによる湿製錠剤の苦味マスキング」
アルフレッサファーマ株式会社 受託事業統括部 CMC開発部 髙橋祐紀 氏
アルフレッサファーマの高橋祐紀氏より、小児用製剤の課題である服用性や苦味、経管投与適性の改善を目的に、湿製錠剤とフィルムコート技術の開発について講演いただいた。まず、新規結合剤としてトレハロースを採用し、実験計画法を用いて処方を最適化した結果、高い錠剤強度と20秒以内の速崩壊性を両立し、さらに湿潤粉体の付着低減による生産性向上も確認した。さらに、小児向けの3mm・5mmの小型湿製錠剤にフィルムコートを施し、苦味の強いデキストロメトルファン臭化水素酸塩をモデル薬物として評価したところ、コート層を素錠質量比4%付与することで約10秒間の苦味マスキングが可能であった。また、30秒以内の崩壊性を維持し、窒息リスク低減や経管投与への適応も期待された。これらの成果は、小児に適した高品質かつ服用しやすい製剤設計への有効なアプローチを示している。
 
閉会の挨拶:粒子加工技術分科会 コーディネーター 山本浩充氏

以上

本分科会の開催案内は、こちらよりご確認いただけます

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