芭蕉の句と米ぬか
時代は元禄、季節は冬、所は現在の東京都江東区、隅田川沿いの芭蕉庵だと思います。
晩年(といっても50歳)の松尾芭蕉翁が詠みました。
寒菊(かんぎく)や 粉糠(こぬか)のかかる 臼の端(はた)
寒菊の小さな花が咲いている庭先、置いてある臼の縁に米ぬかが少し残っている、という
冬の情景が目に浮かびます。
ここに詠まれている「臼」は、抹茶やきな粉を挽く碾(ひ)き臼ではなく、
餅を搗(つ)く時に使う搗き臼です。
この臼に玄米を入れ、杵で搗いて米粒の表面からぬかを落とすのです。
米5升(約7~8kg)に対して500~1000回搗いたといいます。搗いた米はふるい分け、
白米と米ぬかに分けます。上の句は臼の縁に残った米ぬかを読んだものでしょう。
米搗きは結構時間がかかり重労働だったのですが、最近では「道の駅」などに置いてある
コイン精米機を使うと、数分間で済みます。白米は持って帰りますが、米ぬかは、
たいていの人はそのまま残していきます。欲しい人は勝手に持って帰ってよいようです。
そのせいでしょうか。一般に、米ぬかにはあまり関心は払われていません。
米ぬかの色は?粒子径は?その用途は?・・・答えられるでしょうか。
米ぬかは、黄色に近いうす茶色、粒子径は100um前後のふわふわの粉体、油脂、洗剤、
化粧品の原料として、また、ぬか漬け、飼料、消臭材用にも使われ、調理用のレシピも
あるという有用な粉体です。
(2017年1月メルマガより抜粋)