種々薬帳
今年(2016年)も10月22日から11月7日まで奈良国立博物館で正倉院展が開催されました。
この正倉院展では、正倉院所蔵の多数の宝物から数十点が選ばれ公開されます。
2010年の正倉院展では、聖武天皇の皇后であった光明皇后が東大寺の大仏様に献納された
薬物の目録「種々薬帳」が公開されました。そこには、動物由来、植物由来、鉱物由来の
薬物60種類の名前が記載されていました。しかも、そのうちの40種類の薬物が今も正倉院に
保存されているとのことです。
そこで、どのような粉剤がこの「種々薬帳」に記載されているか探してみると、はっきり
「粉」と記されているのは「雲母粉」1種類のみ。あとは粉体と想像される朴消(硫化ナト
リウム)と芒消(硫酸マグネシウム)の2種類、そして、粉砕して用いられたと思われる
寒水石(炭酸カルシウム)、理石(硫酸カルシウム)や龍骨、龍角と呼ばれる化石鉱物系薬物
が約20種類でした。他に、粉に関係のある薬物が無いか探したところ、見つけました!
「鬼臼(キキュウ)」、「臼」という名前がついた薬です。しかし、これは解毒薬(煎じ薬)
になる植物の名前でした。
なお、今年公開された宝物の中にはレアメタル、約1kgのアンチモン塊があります。いったい
何に使われたのか?粉にしてアイシャドウ?しかし、国外で使われた記録はあるものの
奈良時代の日本にはその習慣はありません。では、光電変換素子、電池材料・・・?
(2017年10月メルマガ改訂版)