お土砂(歌舞伎のなかのおはなし)
もうしばらくすると、梅の花の便りが聞こえる頃になりました。
東京にお住まいの方は湯島天神の梅の開花で、
春が近いことを感じられると聞いたことがあります。
昨年(2014年)の新春、京都の南座では、
「松竹梅湯島掛額(しょうちくばいゆしまのかけがく)」
という歌舞伎の公演がありました。
「松竹梅」という新春に関連する言葉と「梅と湯島」
という早春を感じさせる言葉の入った演目のとおり、
正月明け、春を感じさせるお芝居です。
さて、このお芝居の序幕・「吉祥院お土砂(どしゃ)の場」では、
真言の加持・祈祷によって人に振りかけると
かけられた人の体がグニャグニャになるという
パワーを持った白砂「お土砂」という粉体が
重要な役割を果たします。
主人公の一人「紅屋長兵衛」が、この「お土砂」を悪党にかけ、
ヒロイン「八百屋お七」を誘拐しようという
企みを防ぐのですが、関係のない人にも
「お土砂」をかけてしまい、大騒ぎになるという筋書きです。
本当はもう少し複雑な内容で、歌舞伎には珍しい喜劇調。
「お土砂」という粉体も出てきて、
粉体関係の方にもなじみ易いお芝居です。
(2015年1月メルマガより)