活動報告

造粒分科会 報告

2025年3月19日

  • 村瀬コーディネータより挨拶
    村瀬コーディネータより挨拶
  • 大阪大学大学院工学研究科 鷲尾先生のご講演
    大阪大学大学院工学研究科 鷲尾先生のご講演
  • シオノギファーマ株式会社 林様のご講演
    シオノギファーマ株式会社 林様のご講演
  • 三菱ケミカルエンジニアリング株式会社 村田様のご講演
    三菱ケミカルエンジニアリング株式会社 村田様のご講演
  • フロイント産業株式会社 安達様のご講演
    フロイント産業株式会社 安達様のご講演
  • アルテアエンジニアリング株式会社 河野様のご講演
    アルテアエンジニアリング株式会社 河野様のご講演
  • 株式会社構造計画研究所 渡辺様のご講演
    株式会社構造計画研究所 渡辺様のご講演
  • シーメンス株式会社 中田様のご講演
    シーメンス株式会社 中田様のご講演
  • 会場風景①
    会場風景①
  • 会場風景②
    会場風景②
3月7日、2024年度第2回分科会として「造粒技術にかかわる最新の粉体シミュレーションおよびプロセス」をテーマに、造粒分科会 技術討論会(通算120回) を開催いたしました。以下に報告いたします。
これまで、液体やバインダーを用いて粒子同士が結合する造粒工程のシミュレーションは、難しいとされていたが、学術的な湿式造粒のシミュレーション可能性として、大阪大学 鷲尾講師が、実際の現場との整合性の検討をシオノギファーマ 林講師と、フロイント産業 安達講師が、設備設計のエンジニアリングにシミュレーション使用した事例として、三菱ケミカルエンジニアリングの村田講師が発表していただき異なる方向性からシミュレーションの可能性について説明をしていただきました。また、最新のシミュレーションソフトについては、アルテアエンジニアリング 河野講師、構造計画研究所 渡辺講師とシーメンス 田中講師に説明いただき、造粒の様に多様な体系に対してもシミュレーションが適用できてきていることを実感しました。
 
講演 1:「液架橋力を考慮した付着性粒子のDEMシミュレーション」
大阪大学大学院工学研究科 機械工学専攻 講師 鷲野 公彰 氏
・離散要素法(DEM)を用いて濡れた粒子の運動をシミュレーションする際のモデルと実例について紹介。DEMとプロセスモデル(PBMポピュレーションバランスモデル)を食い合わせたモデルの紹介。
・造粒のシミュレーションには、付着力(液架橋力、表面張力…)を入れる必要がある。
・液架橋力をモデル化するにはかなり限定がある。Pendular域までで液量5%程度まで。条件によっても液量10%程度が限度。
・液架橋は、形状が分かれば粒子に働く力が分かるが、粒子一個一個の計算をすると莫大の時間がかかるため、簡単にする必要があり全界面エネルギーの微分から計算をしている。
・DEMの一番の問題は、計算時間が長い。大型計算機で扱える粒子数は10億個の乾燥粒子程度であれば扱える。10億個は、10µmの粒子の場合スプーン1杯にも満たない。1m角の場合1015個の粒子となり現時点では計算できない。粗視化モデル を使うのが一般的。粗視化率計算粒子サイズ/オリジナル粒子サイズとなる。計算は粗視化率の4乗の計算速度となる。

講演 2:「粒子シミュレーションを用いた流動層造粒の粒子成長の解析」
シオノギファーマ株式会社 技術開発本部 連続生産技術部  連続生産技術1グループ長 博士(工学)林 健太朗 氏
・離散要素法と数値流体力学の連成解析により、新規に開発した流動層造粒工程のポピュレーションバランスモデルにより、造粒・乾燥工程中のプロセスパラメータと粒子の凝集・解砕現象との関係を紹介
・造粒工程の報告はあるが、乾燥までを対象とした粒子成長の報告はほとんどない。
・シミュレーションは、実験では観測できない物理量、状態量が時間的、空間的に観測できる。
・DEM-CFDカップリングを用いた粒子運動解析
造粒開始時の缶体温度のみを変化。リアルタイム画像解析粒度測定を用いd50=610µmで加水終了。缶体温度を変化させると、粒子成長に変化が起きる。
DEM-CFDシミュレーションパラメータは、装置サイズ流動板φ1150の流動層造粒機。粗視化倍率を25倍。モデル粒子にも粒度分布を持たせるため14種類の粒子群に離散化した。
風量を実測定。含水率は、抜き取りサンプリングで測定。
加水終了後も粒子成長が続くことが分かった。粒子の急激成長は、可塑限界PL値の39%を超えている値と一致。39%を切った時点が最大粒径となった。
Ⅰ核形成及び誘導段階、Ⅱ粒子成長段階、Ⅲ解砕段階に分け、ⅡⅢを評価した。
缶体温度を変化させることで粒子径による加水終了点制御で加水量は94kg~107kgと差があったが、結果、同一粒径造粒が可能であった。
・生産スケールの実測値と極めて高い精度で粒度分布が一致。さらに、本モデルを予測的に利用可能
 
講演 3:「シミュレーション技術を活用した固形製剤連続生産プロセス構築検討」
三菱ケミカルエンジニアリング株式会社 技術本部 プロセスエンジニアリング部 機械エンジグループ 村田克浩 氏
・固形製剤の連続生産プロセスは現行のバッチ式と比べて多くのメリットがあることから、近年盛んに検討されている。本講演では連続生産プロセスの概要から構築時に発生した課題解決事例、特にシミュレーションを活用した事例について紹介。
・連続生産は、プロセスシステムエンジニアリング(PSE)、機器同士をつないだ時のマスバランス、ダイナミックシミュレーター、PAT技術、配管中のPAT組込など多岐にわたる技術のため、製薬会社/エンジニアリング会社/装置メーカの連携が必須。エンジニアリングを三菱ケミカルエンジニアリングが行った。
・連続生産プロセスの構築事例
空気輸送⇒LIWF⇒二軸造粒解砕⇒気流乾燥⇒PAT(水分粒度)⇒整粒⇒空気輸送⇒LIWF⇒連続混合⇒空気輸送⇒打錠機ホッパー⇒PAT(含量)⇒打錠の工程を構築。
気流乾燥工程のシミュレーションとしてCFDで気流解析を行った。気流乾燥の配管曲がり部に付着が発生し、付着した微粉の原薬濃度が高く、付着が剥がれたときに濃度に影響が出る可能性があった。曲がり部の内側は、流速が遅く付着しやすい。内部の流速をCFDで検討し、エルボ部に外からエアーを入れ付着が剥がれるかをCDFと実際の運転で確認し問題を解決できた。
 
講演 4:「AI技術による流動層造粒装置の予兆保全」
フロイント産業株式会社 機械事業本部 機械開発部 DX推進課 課長 安達岳郎 氏
・AI技術の適用
・製造における問題点:人的リソース不足、装置責任増加。問題点解消のため、AIで品質安定・工場、稼働率向上、脱・俗人化を検討した。
・AIは、生成AI(言語認識)、自動運転(画像認識)、予兆保全(センサーデータ認識)がある。今回は、予知保全AIを使用。
・AIは間違わないのか?
AIは、事前のデータをもって予測するため、情報不足、情報の偏り、新しい傾向の発生などが無ければ問題ない。
AIにできるだけ正確で多くの情報を学習させることが重要。
予兆保全AIは、設備稼働状況を常に監視⇒いつもと違うことを知らせる。連続でデータ量の多い24時間稼働のプラントなどに使用することが多い中、バッチでプロセスごとにデータが変わる、データ量が少ない流動層造粒に適用して大丈夫かを検討した。
予兆保全AIは、各データを1つずつ見ても分からないデータを減らすことで人が判断しやすくする。今回、パラメータの因果関係精査にファジイニューラルネットワークを用いた回帰分析、運転データの解析に動的時間伸縮法(DTW)を用いた。
・事例紹介
検証には、オフラインデータ取得⇒オフライン検証⇒オンライン検証を実施。
一般的にはデータサンプリング周期1分程度であるが、1分では造粒の変化をカバーできないため、今回は5sごとにデータを取得。
どんな予兆、どんな異常を検知するのかを決めるのが一番大事。保全項目を関係者で検討し17ケのデータをセンサーで測定することとした。
フロイント製品の造粒乳糖である乳糖Gの生産でデータを30Lスケール取得した。500µmパス品が製品で、物性評価を実施。
・検証結果
正常条件判断は、うまくいかなかった。原因は18ロットでは、ロットが少ない。最低50ロット程度は必要と考えている。フィルター交換による圧力差を異常として検知した。
スプレーガンエア漏れや目皿板目詰まりは、閾値だけでは検知が難しい短時間異常にも検知できた。
・まとめ
予知保全AIを使うことで、単体では微小な変化でも相関を見て検知が可能。連続運転と異なりバッチ運転の場合、掲示変化する項目に注意が必要。
 
講演 5:「粉体挙動解析シミュレーションソフトウェアEDEMによる造粒・混合工程への適用事例」
アルテアエンジニアリング株式会社 技術本部 テクニカルマネージャ 河野稔弘 氏
・粉体挙動を高精度に再現することが可能であるEDEMは様々な業界やアプリケーションに適用されている。造粒工程についても適用例が豊富であり、転動造粒・撹拌造粒等の成長様式や押し出し造粒や打錠などの圧縮様式など幅広い手法を再現可能であり、解析者が知りたいであろう粒度分布や機械動力をシミュレーションという机上検討によって評価を行うことが可能である。
・EDEM:DEMを使用した商業的ソルバーは、粒子1つずつを計算するため様々な粒子形状に対応可能。様々な接触モデルに対応。機構解析との連成。流体解析との連成が可能である。
・Rom-AI:EDEMとROMを組合せ計算コストを低減させる取り組みも行っている。
 
講演 6:「造粒プロセスの設計に貢献するシミュレーション技術」
株式会社構造計画研究所 SBDエンジニアリング部 渡辺 香 氏
・混相流解析ソフトウェア「iGRAF」を活用した造粒プロセスにおける粉体シミュレーションの事例を紹介。最新の機能を活用し、造粒プロセスの検討に向けた具体的な適用事例を取り上げ、粉体シミュレーションがプロセス設計や生産性改善にどのように貢献できるかを説明。
・iGRAFは、DEMとCFD両方が可能な統合型シミュレーションソフト。比球形の粒子、サイズ違いの粒子を扱える。打錠時の応力分布をFEMでも確認することができる。搬送整列輸送時に、整列するのか、剤形にどのような応力がかかるのかを確認できる。空気輸送の圧力損失も計算できる。
・事例紹介
攪拌造粒で液が拡散していく様子の確認事例:DEM-DPM:粉はDEM、液はDPMで計算した。
流動層造粒で液が拡散していく様子の確認事例:ある時点での液のヒストグラムを見ると、液の少ないところが観察できた。そこをどの様に減らすのかなどの検討を行うと改善できる
今後は、DPM-CFD連成解析、乾燥に伴う液量変化の解析、雰囲気温度の解析、蒸発による潜熱の解析などを検討している。

講演 7:「モデリングによる造粒工程の最適化」
シーメンス株式会社 デジタルインダストリーズ プロセスオートメーション事業部 gPROMSポートフォリオ 中田 昌彰 氏
・複数の課題の解決にデジタルツイン=デジタルによる可視化が役に立つ。
・固体プロセスのモデリングは難しいと言われていた。
・gPROMSは、物理方程式を使用したプロセスシミュレーション。R&Dから現場までデジタルツインでバーチャル化でき全てのプロセスをデータ化し双方向で検討が可能。
・シーメンスでは、ソフトの販売だけでなく、コンサルティングもしているのでモデリングのお手伝いもできる。
・シミュレーションで条件を変えたパターンを多く実施、検証できる。
 

以上

本分科会の開催案内は、こちらよりご確認いただけます

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