活動報告
環境エネルギー・流動化 分科会 報告
2022年9月20日
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分科会コーディネーターの幡野先生の開会挨拶
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東京農工大学名誉教授・(一社)共生エネルギー社会実装研究所所長 堀尾正靭先生の講演
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NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク理事長 泊みゆき様の講演
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株式会社IHI 須田俊之様の講演
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京都大学大学院経済学研究科特任教授 安田陽先生の講演
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副コーディネータ 成瀬先生より閉会の挨拶
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講演会の様子
9月5日(月)、「2050年カーボンニュートラルに向けた再生可能エネルギー利活用のあり方について」と題して講演会を開催しました(以下カーボンニュートラルをCNと略)。
昨年度に引き続き中央大学のリアル会場とWEB参加者を結ぶハイブリッド型の講演会として開催しました(中央大のWebex Eventsを利用)。また今回は「Peatix」を使用し参加者からの申込受付・決済をオンラインで実施しました。
冒頭、分科会コーディネーターの幡野先生の開会挨拶に続き、鈴木幹事の司会進行のもと各講師先生方のご講演を拝聴しました。以下に講演の内容を示します。
《プロローグ》
東京農工大学名誉教授・(一社)共生エネルギー社会実装研究所所長 堀尾 正靭 先生
今回講演会のプロローグとして、日本の現状や国の示すシナリオの問題点や我々が目指すべき方向性についてご講演いただいた。日本にエネルギーが無いと考えるのは思い込みであり、太陽、風力、バイオマス等国産の再エネによる地域循環共生でエネルギー自立が可能であることや、ゼロカーボン経済の実現が経済的な日本沈没を回避するために重要であること等を、講師先生方の講演テーマ概要を交えてご説明いただいた。
《講演1》
『2050カーボンニュートラルに向けた持続可能なバイオマス利活用とは』
NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク理事長 泊 みゆき 様
CNといわれているバイオマスの利活用について、FITバイオマス発電の現況や問題点、そもそもバイオマスはCNなのか(IPCCはバイオマスをCNとしていない)といった議論を気候正義の観点も交えて紹介いただいた。海外からの木質ペレット輸入が急拡大しているが、バイオマス燃料は生産~輸送の各工程で温室効果ガスの排出があり、従来方式よりも発電効率が低く、燃焼の際に石炭以上のCO2を排出することから、バイオマスは発電用ではなく、産業用の中~高温の熱を供給できる再生可能エネルギーとして利用していくべきであるとの考えをご提示いただいた。
《講演2》
『カーボンニュートラルに向けたIHIの取り組み (アンモニア,CCU,P2X)』
株式会社IHI 戦略技術統括本部戦略技術プロジェクト部 主幹 須田 俊之 様
化石資源に頼らない世界実現のための様々な技術についてご講演いただいた。アンモニアに関しては、石炭との混焼や液体アンモニア直接噴霧燃焼の実証試験結果を提示いただき、燃料アンモニアの社会実装ロードマップについても言及頂いた。カーボンリサイクル技術としては、化学吸収によるCO2回収とメタネーション、オレフィン合成についてご説明いただいた。また分散型エネルギーモデルとして「そうまIHIグリーンエネルギーセンター」での取組み(太陽光発電、蓄電池、水電解水素製造・貯留)等についてご紹介いただいた。各ソリューション個々のCO2削減効果は大きくないため組合せが必要であり、既存インフラの活用やコスト低減のためのイノベーションや導入に対するインセンティブ等についても検討していく必要があるとのことであった。
《講演3》
『再生可能エネルギーと電力システム 〜何故世界では再エネと系統増強に投資が進むのか?~』
京都大学大学院経済学研究科特任教授 安田 陽 先生
再生可能エネルギーの問題を経済学的観点から、国内であまり議論になっていない海外の動向も交えご講演いただいた。世界中で脱炭素が進むのは、化石燃料に大きな「外部不経済」があり、代替電源としての再エネに大きな「便益」があるからである、とのご説明があった。また日本では風力や太陽光等の変動性再エネに対して電力貯蔵が前提とされているが、現状の普及率では系統増強を優先すべきであること、貯湯槽による温水貯蔵が最もコストの低いエネルギー貯蔵技術であり所謂ローテクを用いた「しくみづくり」にも目を向けるべきであること等についてご説明頂いた。
各講演後、副コーディネータの成瀬先生に総括いただいて閉会となりました。
今回も新型コロナの影響で技術懇親会は実施できなかったが、講演会終了後のリアル会場では講師の先生方を交えて、各所で意見交換される様子が見られました。
講師の先生方、リアル会場、WEB合わせご参加いただいた皆様、中央大学のスタッフ、関係者各位に心より御礼申し上げます。