活動報告
環境エネルギー・流動化分科会 報告
2021年7月15日
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①安曇野バイオマスエネルギーセンター
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②安曇野トマト農園
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③安曇野BEC集合写真
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④東京農工大学名誉教授・共生エネルギー共生エネルギー社会実装研究所所長 堀尾正靭先生の講演
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⑤参加者の皆様に検温、手指消毒にご協力いただきました
1) 安曇野バイオマスエネルギーセンター、エア・ウォーター農園
エア・ウォータグループの農地所有適格法人(株)エア・ウォーター農園は、北海道千歳市と長野県安曇野市で野菜栽培事業を行っており、今回、安曇野市にある農園とその敷地内にある安曇野バイオマスエネルギーセンターを見学しました。バイオマスエネルギーセンターでは、間伐材等由来の木質バイオマスを燃料とした発電を行い電力会社に売電しています(FIT適用)。また、発電で生じた熱、排気ガスに含まれる炭酸ガス(CO2)を農園に供給し、電気・熱・CO2を有効活用するトリジェネレーション事業を実現しています。今回見学した大型施設園芸では、暖房に要するエネルギーを抑えつつ、生産量を如何に増やすかが課題とのことで、地域エネルギー源である木質バイオマスの利用により、農園で使用するLPGや液化炭酸ガスの削減につなげています。
安曇野バイオマスエネルギーセンターでは、独)Spanner社の小型ガス化・エンジンシステム(49kW)を40台備えており、定格1960kWの発電出力を有しています。熱は3800kWの出力を有しており、このうち1000~1500kWを木質チップの乾燥に使い、残りを農園に供給しています。
また排ガスを浄化した後の炭酸ガス300kg/h(CO2-100%換算)を3棟あるハウスのうち1棟に供給しており、今後、他棟への供給拡大を計画されているとのことです。
エア・ウォーター農園においては、複合環境制御システムを採用したガラスハウスの中で複数種のトマトを栽培している様子を見学しました。温室内の温度、湿度、潅水をコンピュータで制御し、炭酸ガスを温室内に循環させ最大2000ppmの範囲で調整しているとのことです。収穫したトマトは、納入先が求める品質を確認したのちに出荷されています。
今回見学したエア・ウォーター(株)の取り組みは、木質バイオマスのエネルギーや発生するCO2を農業に利用する地産地消型の資源循環を実現するモデルケースとして位置づけられるものでした。
2)講演会
会場を松本商工会館に移し、東京農工大学名誉教授・共生エネルギー共生エネルギー社会実装研究所所長の堀尾正靭先生に「2030-50年への環境エネルギー動向と地域・自治体新電力の課題」と題して講演いただきました。先生は今年5月の第13回流動層技術国際会議にてFluidization Achievement Awardを受賞され、今回が受賞後初のご講演となりました。
欧米と日本との問題のとらえ方の違いや工学者・専門家としての責任といった視点も織り込んで2050年脱炭素社会の実現に向けて、日本のこれからの30年をどのように考えるかについて、お話しいただきました。既存の優良技術の適用でCO2の90%削減は可能との検討結果を提示いただく一方、エネルギー基本計画をめぐって国が検討しているシナリオの問題点をご指摘される等、環境・エネルギーの分野に携わるものとして、大変考えさせられる刺激的なご講演でした。参加者の皆さんからの質疑も予定時間を超過するほど活発なものとなりました。
今回、東京、大阪、名古屋などで緊急事態宣言が発出されている中での開催となりましたが、対面でディスカッションできたことは大変意義深いことであったと思います。
コロナ禍にもかかわらず見学対応いただいたエア・ウォーター殿、多数お集まりいただいた参加者の皆様に心より御礼申し上げます。