活動報告

トップページ > 活動報告 > 分科会活動 > 環境エネルギー・流動化分科会 > 環境エネルギー・流動化分科会 報告

環境エネルギー・流動化分科会 報告

2024年7月31日

  • ①恵庭市エネルギー循環システム・見学風景(バイオガスホルダ)
    ①恵庭市エネルギー循環システム・見学風景(バイオガスホルダ)
  • ②恵庭市エネルギー循環システム・見学風景(汚泥乾燥機)
    ②恵庭市エネルギー循環システム・見学風景(汚泥乾燥機)
  • ③サニックスエナジー苫小牧発電所(パンフレットより)
    ③サニックスエナジー苫小牧発電所(パンフレットより)
  • ④サニックスエナジー・集合写真
    ④サニックスエナジー・集合写真
  • ⑤道央廃棄物処理組合・見学風景
    ⑤道央廃棄物処理組合・見学風景
  • ⑥道央廃棄物処理組合・集合写真
    ⑥道央廃棄物処理組合・集合写真
  • ⑦奈良機械・北海道サテライト・集合写真
    ⑦奈良機械・北海道サテライト・集合写真
2024年7月4日~5日、今年度第1回目の分科会として、北海道内の環境・エネルギー関連施設の見学会を開催しました。以下に概要を報告します。
①恵庭下水終末処理場/恵庭市生ごみ・し尿処理場/恵庭市焼却施設
最初に訪問した恵庭市では、下水終末処理場、生ごみ・し尿処理場、ごみ焼却施設が隣接配置された、全国でも類を見ないエネルギー循環システムを構築されている。ここでは地域バイオマスとして、し尿・浄化槽汚泥や生ごみを下水処理場の消化槽に投入し、発生したバイオガスを民設民営のバイオガス発電設備に売却することで、FIT活用のバイオマス発電事業(PPP)を実施している。
ごみ焼却施設の廃熱は飽和蒸気として回収され、スクリュ式小型蒸気発電機による発電、消化槽の加温、蒸気間接加熱型乾燥機による汚泥乾燥、場内暖房・給湯等に有効利用されている。汚泥乾燥時の臭気はごみ焼却炉の燃焼用空気として利用され、乾燥汚泥の一部は肥料として販売され、残りはごみ焼却炉で焼却されて熱回収に貢献している。
 国交省管轄の下水道事業と、環境省管轄の廃棄物事業(ごみ・し尿)が、高度に連携できている秘訣を伺ったところ、1)恵庭市の職員が下水・廃棄物それぞれの部署間異動を経験することで、それぞれの事業に関する知見を共有していること、2) 市民から循環型社会形成に対する協力や提案があったこと、3)防衛省からの補助金(防衛施設周辺整備事業)が活用されたこと等が理由とのこと。
恵庭市はこの循環型システムにより、下水処理場で消費する電力以上の電力を発電し、ネットゼロエネルギーを実現している。この功績が評価され、令和3年度国土交通大臣賞「循環のみち下水道賞」グランプリを受賞されている。
 
②廃プラスチック専焼火力発電所((株)サニックスエナジー)
続いて苫小牧へと移動し、サニックスエナジー苫小牧発電所を見学した。
当発電所は、廃棄物由来のプラスチック燃料のみ使用する、世界でも類を見ない火力発電所である。全国15か所にあるサニックスのプラスチック資源開発工場で選別・破砕され、約1m3のキューブ状に圧縮梱包された廃プラは、海上輸送で苫小牧港まで運ばれ、発電用燃料として利用されている。発電設備は、循環流動ボイラ(最大蒸発量180t/日×2基)と蒸気タービン・発電機から成り、最大74,000kWの発電出力を有する。ここでは低空気比と2段燃焼によるNOx低減のほか、バグフィルタへの消石灰及び活性炭吹込による排ガス処理が図られている。
廃プラ専焼の火力発電設備ということで、建設当初(2003竣工)は多くの課題があったと伺ったが、現在は問題なく連続稼働している。近年、プラスチックに対しては、サーマルリサイクルよりもマテリアルリサイクルが優先される傾向にあるが、現時点では燃料入手に対する影響は出ていないとのこと。焼却灰は用途先については、現在鋭意検討中とのことであった。
 
③最新ごみ焼却設備(道央廃棄物処理組合)
見学会2日目は、まず2024年4月に運転開始したばかりの道央廃棄物処理組合焼却施設を訪問した。当施設では2市4町(千歳市、北広島市、南幌町、由仁町、長沼町、栗山町)の可燃ごみを広域処理している。
ごみピットに投入された可燃ごみは自動運転クレーンによってストーカ式焼却炉に投入される。焼却炉より発生する熱はボイラで約260℃の蒸気として回収し、蒸気タービン発電機で発電(1990kW)を行っている。排ガスには消石灰と活性炭が吹き込まれ、バグフィルタで飛灰とともに捕集される。飛灰はキレート処理の後、搬入量に応じて各市町の処分場へ搬送されるとのこと。また、施設敷地内には災害時の一時保管スペースとして広大な空地が確保されていた。
これまで当分科会で見学してきた最先端のごみ焼却施設に比べるとオーソドックスな構成の設備であったが、特別高圧用送電線や鉄塔の新設が不要な発電容量に抑えるなど、計画上の工夫や安定稼働を重視した設計思想など、地域のニーズに合致した適正技術が採用されていた。当施設では外部見学者も積極的に受け入れており、しばらくの間は予約がほぼ埋まるほど盛況とのこと。ご案内いただいた組合職員の方も大変熱心で、見学会参加者に技術的な内容を逆質問されるなど、活気に満ちた雰囲気だった。
 
④(株)奈良機械製作所北海道サテライト
今回の見学会最後の見学先として奈良機械製作所の北海道サテライトを訪問した。
この施設では1995年から流動層乾燥機や粒子表面改質装置などの開発・設計・実験検証が行われている。ここでは、当分科会前幹事であり、現在北海道サテライト所属の桂田様からハイブリダイゼーションシステム(乾式粒子設計装置)の原理や特徴について説明いただいた。この装置では、原料となる微粒子を高速気流で分散させ、衝撃力によって粒子表面の改質・複合化や、不定形粒子の球形化を行うことができ、例えば、母粒子表面に別種の子粒子を固定化・成膜化することで、従来にない新素材を創製したり、大幅な性能向上を実現することが可能となる。近年は、電気自動車用リチウムイオン電池の負極材である黒鉛の球形化にも利用されており、この装置で得られた球状化黒鉛を用いた電池は、海外製品と比べて圧倒的に優れた性能を発揮しているとのことだった。
概要説明の後、海外に出荷される直前の大型装置を見学した。製品化に至るまでのご苦労や様々な工夫について伺い、装置の細部に至るまで緻密に作りこまれている様子を拝見して、日本のものづくりに対する底力を実感するとともに、我が国の技術が地球環境問題解決の重要な部分を担っていることを改めて認識することができた。
 
今回の見学会で設備見学にご対応頂いた恵庭市様、(株)サニックスエナジー様、道央廃棄物処理組合様、(株)奈良機械製作所北海道サテライト様、並びにご参加頂いた皆様に御礼申し上げます。
また見学先受入可能人数の関係で、少人数での開催となりましたことお詫び申し上げます。
(本見学会に関しては、奈良機械製作所の輿石幹事にご尽力いただきました)
 

以上

本分科会の開催案内は、こちらよりご確認いただけます。

PAGE TOP