活動報告
湿式プロセス分科会 報告
2025年12月23日
-
株式会社墨運堂 職工 林 龍之介 氏
-
株式会社墨運堂 「にぎり墨」体験
-
参加者集合写真 (がんこ一徹長屋<大和の職人長屋>)
-
三菱ケミカル株式会社 服部剛氏のご講演
-
神職・書家 木積凜穂氏のご講演
前半では、株式会社墨運堂様のご協力のもと会社紹介を受け、その後職人による墨づくりの職場見学と「にぎり墨」体験をさせて頂きました。
後半は、三菱ケミカル株式会社 服部 剛 様による「墨」と「カーボンブラック」伝統工芸を支える原料製造者の視点についてのご講演と、神職・書家の木積凜穂(こづみ・りんすい)様による「modern 書 art~文字は優しく心を包む~についてのご講演をして頂きました。また、交流会にも多数の方にご参加頂き、懇親・意見交換が行われました。以下の通りご報告いたします。
【分科会プログラム】
①株式会社墨運堂 様 墨の資料館にて会社紹介、職人による墨づくりを見学
株式会社墨運堂 影林清彦 様
会社紹介のビデオ上映会後、墨の資料館を見学しました。製造現場では、油を入れた土器に燈芯(とうしん)をともし、蓋につく煤(すす)を集めて墨が造られるとお聞きし、とても時間をかけてモノづくりをされていると説明を受けました。墨玉を足練り、手練りをされている現場を見学した後、にぎり墨体験を致しました。職人による貴重な製造現場の様子を学ぶことが出来ました。
②講演:「墨」と「カーボンブラック」‐伝統工芸を支える原料製造者の視点‐
三菱ケミカル株式会 カーボンゴム技術グループ グループ長 服部 剛 様
墨とカーボンブラックの違いについて説明頂きました。伝統的な製法で作られる松煙と油煙と、近代的な製法で作られるカーボンブラックがあります。工業品であるカーボンブラックは品質が安定しており、色の再現性が高く、不純物の量がコントロールされています。製造可能範囲が広く、後処理も可能でお値打ち価格で提供できると解説して頂きました。一方煙の良いところは、粒度分布が比較的広く、墨の仕上がりが柔らかくなり、再生可能な原料であると解説して頂きました。また塗膜の色味を感じるメカニズムについて、カーボンブラックの一次粒子が小さいほど青の光を吸収するので、薄い塗膜を通過して反射して目に入る光には相対的に赤い色が多く、また人は暗い場所では青っぽい色が明るく見え、赤っぽい色が暗く見える「プルキン現象」を示し、わずかでも青い光があればそれを感じやすいという解説をして頂きました。
③講演: modern 書 art ~文字は優しく心を包む~ 神職・書家 木積 凜穂 様
神職として書家として生きとし生けるもののために自分は何が出来るのか、具体的な実例を交えてわかりやすく解説して頂きました。朝の日課は神社参拝とお墓参り、ご神水をいただき、墨を磨り制作に没頭されます。神職としても書家としても、水で清めることは必須であり、美しい水に恵まれている日本に生を受けたことに感謝されておられ、日本の神道には聖典がないと語られたのがとても印象的でした。書道を身近に感じてほしいと「Modern 書 art」を創作され、書家として国内外で個展を開催されておられ、大阪・関西万博のフランス館で「神事」を執り行われた貴重な映像を拝見致しました。フランスからの招聘によるもので、日仏両国はもちろん、世界が一つになり調和できる機会につながればと思いお引き受けされたようです。神職・書家を通して人の心に寄り添い、励まし、支えることの出来る作品を生み出し、日本の文化を伝える事ができるよう精進される姿に感銘を受けました。
以上
本分科会の開催案内は、こちらよりご確認いただけます