活動報告
湿式プロセス分科会 報告
2025年8月4日
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①TOTOサニテクノ㈱代表取締役社長 山崎様のご講演
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②TOTOミュージアム見学
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③ 新潟大学工学部 田中教授のご講演
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参加者集合写真(TOTOミュージアム内)
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懇親会状況
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参加者集合写真
前半では、TOTO様のご協力のもと会社紹介を受け、その後製造ラインの見学をさせていただきました。設計開発はCAD等を用いたデジタル化が進んでいる一方で、製造現場では職人の技術による製造が行われており、大変興味深い内容でした。後半は、新潟大学の田中孝明先生による「食品・バイオプロセスにおける濾過分離」についてのご講演がありました。理論重視に偏らず、失敗した場合の対処法なども含めたわかりやすい内容で講演いただきました。
また、交流会には分科会参加者の多くが参加され、懇親を深めることができました。以下の通りご報告いたします。
【分科会プログラム】
①TOTO株式会社様 会社紹介、技術講演、衛陶工場見学
TOTO株式会社執行役員 衛陶生産本部長 兼 TOTOサニテクノ株式会社 代表取締役社長 山﨑政男 様
TOTO様は原料の調達や貿易の利便性を考慮し、小倉で創業されました。研究開発も小倉で行われており、生産拠点は国内のほか、主にアジア地域に展開されています。
製造工程は、鉱石を粉砕してスラリー化し、これを石膏型に流し込んで一定の水分を除去した後に離形し、釉薬を吹き付けて焼成することで製品化されています。形状が複雑な製品については、複数の型を用いて部品を成形し、つなぎ合わせる方式で製造されています。
焼成時には大きな収縮が生じ、重力の影響によって変形も起こるため、まっすぐな状態で仕上げるためには型設計に高度なノウハウが求められます。釉薬を吹き付けただけでは焼成後はアルカリに弱く、長期使用により溶解して汚れが付きやすくなることがあります。これを防ぐために、約0.1mmの高純度ガラス層が追加されており、製品の耐久性と清潔性の向上に寄与しています。特許はすでに失効していますが、焼成時の収縮を制御することが非常に難しく、TOTO独自の技術として高付加価値製品の実現に貢献していると説明がありました。
TOTO社のこだわりとして、「掃除のしやすさ」が重視されている点も印象的でした。
衛生陶器工場の見学では、部品の接着工程や焼成ラインを実際に見学させていただき、貴重な製造現場の様子を学ぶことができました。
②TOTOミュージアム見学
TOTO社の創業の精神、現在に至るまでの歩みや、トイレの変化の歴史が展示されており、非常に興味深い内容でした。生活文化の変遷とともに改善されてきた衛生陶器製品について、多くの学びを得ることができました。
展示には、かつて使用されていた木製便座のトイレから、100万円を超える高級トイレまで、他社製品も含めて幅広く紹介されており、時代ごとの技術やニーズの変化を実感することができました。
③講演:食品バイオプロセスにおける濾過分離 新潟大学工学部 材料化学プログラム 教授 田中 孝明 様
「食品・バイオプロセスにおける濾過分離」について、効率化の観点から具体的な実例を交えてわかりやすく解説いただきました。濾過の主な目的としては、製品の回収、清澄化、無菌化などが挙げられます。対象物としては、ミリメートルからマイクロメートルサイズの粒子、柔らかい粒子、不定形のものなど、様々な性状があり、それに応じた濾過方法の選定が求められます。
産業用途ではフィルタープレスがよく使用されており、プリーツ型フィルターのように表面積を増やすことで濾過効率の向上も図られています。デッドエンド型とクロスフロー型の違いや適用範囲についても説明があり、たとえば一定量の濾過に向いているのはデッドエンド型であることなどが示されました。
濾過速度は濾過面積や圧力に反比例するため、面積を広く取ることで速度の向上が図れますが、柔らかい粒子は圧縮されやすく、濾過しにくくなるという課題があります。その対策として、珪藻土、パーライト、セルロースなどの濾過助剤の使用により、ろ過抵抗の軽減が可能になることが紹介されました。ただし、助剤を使用すると廃棄物に含まれるため、処理が課題となる点も指摘されました。
クロスフロー濾過は、粒子が大きい場合には有効ですが、小さい粒子や配向しやすい粒子には不向きです。逆洗による性能回復が可能な点は利点とされています。
また、生分解性プラスチックを使用したフィルターについても紹介があり、目詰まりしたフィルターをたい肥化できるなど、環境負荷低減の工夫もなされています。フィルター選定においても、リサイクル性やSDGsの観点を取り入れていくことが重要であると解説されていました。
以上
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