活動報告
晶析分科会 報告
2020年12月14日
2020年11月19日、Web講演会として、第1回分科会を開催いたしました。
講演1 医薬品開発における共結晶研究の基礎知識 アステラス製薬株式会社 岩田健太郎氏
低分子医薬品の半数以上は経口剤であり,その製剤中に含まれるほとんどの薬物が,経口吸収を志向するうえで水溶性が低い問題を抱えている。薬物の共結晶化は,化学構造中に解離基を含まない難水溶性薬物にも適用できる結晶工学的な溶解性改善手法の1つである。
講演では,溶解度相図に基づいた溶解性に関する理論をはじめ,難水溶性薬物の共結晶の医薬品開発おいて重要な考え方について概説された。
講演2 各極のレギュレーションを踏まえた共結晶の評価手法 国立医薬品食品衛生研究所 小出達夫氏
医薬品の共結晶は、既に実用段階に達しており、共結晶を用いていると思われる医薬品が上市している。医薬品の承認申請における取り扱いが整備されることにより、その開発および上市が大きく進むことから、FDAおよびEMAから相次いで、共結晶の取り扱いに関するガイドラインが公示されている。日本においても、何らかの対応が望まれており、ガイドラインの制定、それに伴う評価法の検討が行われている。講演ではその状況について紹介された。
講演3 医薬品製剤化を見据えた共結晶原薬の開発 武田薬品工業株式会社 辛島正俊氏
近年、創薬ターゲットの多様化に伴い、より高度な物性・製剤技術が必要とされている。難水溶性などの物性に係る諸問題に関して、既存の技術を凌駕する新たな技術開発が盛んに行われている。共結晶は、医薬品の新たな結晶形態としてその有用性は広く認識されているが、共結晶の製剤化という観点では、実際の医薬品開発に供するためには、技術面及び規制面の双方において、十分に留意する必要がある。講演では、共結晶原薬の製剤化技術を紹介され、その課題と展望について議論された。
講演4 粉体工学会・共結晶WSの紹介 明治薬科大学 深水啓朗氏
粉体工学会内に発足した共結晶WSの目的、体制、課題などご紹介いただき、必要な事項について共有化できた。
4人の講師の先生方から医薬品化合物の晶析や物性評価について、共結晶の現状を解説いただき、新技術動向について学習できたことは参加者にとっても有意義な会になったことと思います。晶析技術は様々な技術分野に利用されているため、今後もよりたくさんの方々に参加していただけるよう企画・運営を行っていきたいと思います。