活動報告

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微粒子ナノテクノロジー分科会 報告

2025年4月7日

  • 東北大学 教授 蟹江様のご講演
    東北大学 教授  蟹江様のご講演
  • 岐阜大学/東北大学 准教授 高井様のご講演
    岐阜大学/東北大学 准教授 高井様のご講演
  • 光科学イノベーションセンター 河村様より施設のご説明
    光科学イノベーションセンター  河村様より施設のご説明
  • 見学会の様子
    見学会の様子
  • 参加者の皆様
    参加者の皆様

2025年1月16日、2024年度第2回微粒子ナノテクノロジー分科会を、「微粒子・ナノ粒子のハイブリット化技術:設計、評価と応用展開」をテーマとして開催しました。微粒子・ナノ粒子など幅広い評価技術の講演2演題と、3GeV 高輝度放射光施設(NanoTerasu)の見学を実施しました。
講演はテーマとした微粒子・ナノ粒子の表面状態や分散状態の評価技術や、合成技術、用途、生成AIの活用など多様な内容にて構成され、各講演後にはさまざまな視点からの質疑応答が行われました。さらに、NanoTerasuの見学においては国内最先端の評価技術を学び、最高レベルの評価技術の活用先、具体的な評価事例などを紹介頂き活発な議論がなされました。以下にその概要について報告します。
 
1) 講演①「ハイブリッドナノ粒子材料のナノレベル自己組織構造解析への放射光・先端計測の活用」
東北大学 国際放射光イノベーション・スマート研究センター 教授
東北大学 多元物質科学研究所 教授 蟹江澄志 氏
小角X線散乱(SAXS)を使いこなすことで散乱強度と散乱角から粒子間相互作用、粒子サイズ、形状、表面形状などの情報が得られる。SAXS分析の基礎理論と、最先端の分析・解析技術による実例をご紹介頂いた。最長42mを実現できるカメラ長と低波長を特長とするSpring8 BL19B2によるBaTiO3粒子分析事例をもとに、ピークフィッティングによるデータ解析で、一次粒子、二次粒子、凝集体をピーク分離できることが紹介された。この手法によれば、ナノ粒子分散系の各成分の定量評価が可能であり、界面活性剤の違いによる凝集状態を定性評価することができる。さらに、SAXS分析によるナノ粒子分散系評価手法の応用事例をご紹介頂いた。ITOナノ粒子は形状要因によって分散性が異なることを見出し、界面活性剤フリーの水系インク調製に成功した。また、日本酒の成分分析による風味、味わいの定量化といったユニークな研究事例のご紹介もあり、幅広い分野における実用的な分析手法としてご説明頂いた。
 
2)講演②「粉の魅力を引き出す粉体評価技術~ナノ粒子から昆虫糞まで~」
岐阜大学 工学部 化学・生命工学科 准教授
東北大学 多元物質科学研究所 准教授 高井千加 氏
特殊形状のシリカ粒子の合成技術、用途や特性に関する研究紹介から、セルロースナノファイバーの使いこなし、カブトムシの幼虫の糞の解析など、様々な研究内容に対して、ナノ粒子の分散や表面状態の評価という観点からご講演をいただいた。時間領域核磁気共鳴TD-NMRを用いることで、粒子表面と溶媒の親和性を手軽に知ることができる。同じ粒子でも凝集状態で異なる性質を示すことがあり、凝集状態のコントロールのためには表面状態の制御が重要となる。例えば、中空シリカ粒子の場合は、粒子一つの特性としては中に空気を含むため断熱性という特長が現れる。また、特殊なスケルトン状の中空粒子には構造から光を効率よく散乱する特性もあり、拡散フィルムの効率向上に利用できる。分子レベル、粒子レベル、凝集体レベル、バルクといったようにスケール毎の特性を見極めるため、TD-NMRやLUMIsizer、SAXS測定など種々の分析手法の組み合わせ事例などをご紹介頂いた。さらには、カブトムシの幼虫の糞のような複雑な生態物質でも機械学習の活用により定性評価が可能となった事例をご紹介頂いた。分析対象のスケールと、適切な分析技術を用いることで見落としていた特性を発見できる可能性があることを学ばせて頂いた。
 
3)見学会「3GeV高輝度放射光施設NanoTerasu ご紹介」
一般財団法人 光科学イノベーションセンター 副理事長 河村純一 氏
放射光施設について基本原理と、他の施設とNanoTerasuの違いについてご説明頂いた。第4世代放射光施設は世界に4か所あるが、イメージング機能が強化され短時間での画像化が特長である。電子顕微鏡では真空中、表面のみの情報となるが、X線であるため真空は必要なく、生体や水中の試料、内部までの観察が可能である。Spring 8がバルク金属などを得意とする一方で、NanoTerasunは軽元素まで測定可能なソフトX線~ハードX線を備え、有機物やLi、ナノ材料への適用が可能である。低エミッタンス高原による高い輝度とコヒーレンスが特長であり、イメージング性能が極めて高い。NanoTerasuでの測定事例を交えて、どんなことに活用できるのかを実際の設備を見学しながらご紹介頂いた。
 

以上

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