活動報告

トップページ > 活動報告 > 分科会活動 > 微粒子ナノテクノロジー分科会 > 微粒子ナノテクノロジー分科会 報告(粒子積層技術分科会と合同)

微粒子ナノテクノロジー分科会 報告(粒子積層技術分科会と合同)

2024年5月1日

2024年3月8日、2023年度第3回微粒子ナノテクノロジー分科会を開催しました。本分科会は粒子積層技術分科会との合同で、株式会社KRI 様の御協力をいただき、京都リサーチパークにて開催しました。「粒子積層技術におけるナノ界面制御~脱バインダー・脱脂技術について~」をテーマとし3講演が行われました。講演後は、株式会社KRI スマートマテリアル研究センター様の施設見学を行いました。開催募集後すぐに満席になるというありがたい開催となりました。合同開催および見学を行う事でナノテクノロジー、粒子積層への知見を深める貴重な機会となりました。以下にその概要について報告します。
 
講演① 「電子セラミックスと脱バインダー技術」
中部大学 教授 坂本 渉 氏
積層型セラミックスコンデンサは薄層化・高積層化がますます進んでいる。積層型セラミックコンデンサの焼成過程において、粉末成形積層体を脱バインダー工程、焼結工程を経て製品が製造されるが、脱バインダー工程は、製品性能を決める重要な製造プロセスの一つである。生産現場では、熱分解法によりバインダーを除去する手法が主流となっており、脱バインダー工程の条件がセラミック体の微構造に影響を及ぼさないようにするため、熱分解過程を確認したり、酸素濃度制御やバインダー分解ガスの系外排出などの条件を設定されている。研究により、バインダーとして用いられる材料は、熱分解時に側鎖から分解が開始するものが主流となっているが、残渣になりにくい主鎖から分解するものが開発されている。一方で、実際の製造メーカにおいては、材料系が最適化された状態で、工程管理の条件が検討されることが多く、新規開発された材料が採用されにくい状況にあるとのことで、企業の側から視点でのエピソードも含めて興味深い内容をご教示いただいた。
 
講演② 「セラミックスの脱脂体構造可視化と後工程への影響」
長岡技術科学大学 教授 田中 諭 氏
多くのセラミックスが粉体から所望の形状を製造する過程において、成形体に含まれるバインダーが焼結体の性能に影響を及ぼすことから、「バインダーがどこにいるか」を確認することが重要であるとの視点から、「バインダーの役割」「成形体および脱脂構造の可視化」および「バインダーの性質を利用した構造の均質化の取り組み」についてご講演いただいた。バインダーには、良好な成形性や成形体への強度付与だけでなく、焼結を阻害しない温度で不純物として残存せずに分解することが大切である。そのバインダーを可視化・観察するための技術として、光学顕微鏡や共焦点走査型レーザ蛍光顕微鏡、X線CTをご紹介いただいた。このような技術を用いてバインダーの状態を確認することで、その後の工程で適正な対策を講じることが可能となり、機械特性が改善された事例をお示しいただいた。成形体や脱脂体、焼結体それぞれの詳細な画像データをお示しいただくことで、バインダーや脱脂体構造を可視化することの重要性を理解できる内容であった。
 
● 株式会社KRI ご挨拶 会社紹介
株式会社KRI スマートマテリアル研究センター長 荘所 大策 氏
講演③座間様のご講演に先立ち、株式会社KRI様についてご紹介いただいた。
株式会社KRIは大阪ガス100%の技術開発支援・受託研究を行う企業で、 スタンフォード大学の研究機関として設置されたStanford Research Institute (SRI)をモデルとして設立された。
KRI様としての研究・開発支援サービス、スマートマテリアル研究センターにおける重点対応領域やシーズ事例をご紹介いただいた。スマートマテリアル研究センター様は、材料を軸としてエレクトロニクスやモビリティ、ライフサイエンスといった分野で研究開発支援実績があるとご紹介いただいた。
 
講演③ 「粒子の分散・表面改質技術およびその応用」
株式会社KRI スマートマテリアル研究センター 主席研究員 在間 弘朗 氏
微粒子表面へのポリマーの吸着、酸化グラフェン付着現象を使った微粒子の表面改質をテーマに2つのトピックに関して解説頂いた。1つ目は“レディメイドポリマーを使って、ナノ~マイクロメートルサイズ粒子を分散・薄膜カプセル化する”と題し、既存のポリマーにモノマー自体を導入した“レディメイドポリマーを利用した手法を紹介下さった。無機粒子はOH基や表面電荷を有している事が多い事から、粒子と相互作用する官能基を導入する事で吸着を起こすのではというシンプルなアイデアを元にポリマーを改造する。改造したポリマーを微粒子に吸着させると表面で5~10nmのポリマー吸着層を形成する。するとナノ粒子は分散性が向上しコンポジット材料は透明化する。また酸化グラフェンを用いて粒子を表面修飾する技術を紹介下さった。酸化グラフェン(GO)溶液に粒子を混合するだけで、GOは粒子に付着し分散剤の様に働く。窒化ホウ素にGOを吸着した複合材料を用いた実例としてエポキシ樹脂の熱伝導率の向上を紹介下さった。2つ目は“酸化鉄ナノ粒子を使った微粒子の磁場配向”と題し、窒化ホウ素を永久磁石により配向させると、シリコーン硬化物の熱伝導性が2倍になる事も示して下さった。受託研究をスピーディーに行われている(株)KRIだからこそのノウハウが詰まったお話を解りやすくご講演下さった。
 
● 株式会社KRI スマートマテリアル研究センター施設見学
「わたしたちはお客さまの事業イノベーションに貢献します」という理念のもと先進的研究開発とコンサルティング機能を併せ持つ受託研究会社である。幅広い領域での高度な技術力と問題解決力を有する経験豊富な研究の専門家が、顧客が困っている技術課題を解決する。例えばカーボンニュートラルを目指す、二次電池材料や光触媒などのグリーンエネルギー材料、フッ素フリー社会を目指した代替ポリマー等、時代のトレンドに合わせた機能設計から企画、検証、研究開発、製品開発とトータルで受託研究事業を推進している。
実際に見学した実験室にはスピーディーに実験できるようにという工夫が随所に見られた。TG(熱重量測定器)が接続されたGC-MSは得られたガス成分が同時に定性定量可能である。SEMやTEM室には凍結し切片を作成可能な前処理機、目的により使い分けているだろう2台のNMR、造粒の為の小型で内部が観察可能なスプレードライ装置、小さな電気炉は対象試料ごとに複数台並べられていた。実験室を繋ぐ廊下の壁には研究員がそれぞれ研究したというポスターがびっしりと掲示してあるのも印象的であった。機器は一人が全てを操作するのではなく、1人がいくつかを操作し得意な人に測定をお願いするという。効率的な実験設備だけでなく一人一人の専門性とプロ意識、更にはチームワークの良さから迅速な受託研究サービスの提供可能な事が伝わってきた。
 
株式会社KRI様には微粒子ナノテクノロジー分科会活動にご協力下さり改めて深く御礼申し上げます。
 

以上
PAGE TOP