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微粒子ナノテクノロジー分科会 報告

2023年9月28日

  • 故宮原稔先生を偲ぶ会
    故宮原稔先生を偲ぶ会

2023年8月10日、本分科会では「故宮原稔先生を偲ぶ会」と題し、当分科会において長年にわたり副コーディネータを務められ、昨年8月に御逝去された宮原先生を偲び、ゆかりのある3名の先生方よりご講演をいただきました。
各講演者より、故宮原先生との長年の関わりや思い出を交えながら、表面修飾によるナノ粒子の分散・凝集、超臨界技術を用いた微粒子合成、液相法や気相法等を用いた微粒子合成に関する講演が行われ、本分野の理解を深める貴重な機会となりました。
以下にその概要について報告します。
 
1) 「微粒子・ナノテクノロジー(20年、分科会を宮原先生と共に」  東京農工大学 理事・副学長 神谷秀博先生
本講演では、ナノ粒子の表面修飾による分散・凝集と、表面修飾剤の吸着強度の解析手法についてご説明頂いた。
溶媒中でのナノ粒子の分散安定性を確保するための解決手段のひとつとして、粒子の表面修飾が挙げられる。表面修飾剤としてカチオン性ポリマー(ポリエチレンイミン)とアニオン性活性剤の会合体を用いると、 SiO2 粒子や Ag 粒子を極性の異なる幅広い溶媒に対して安定に分散させることができる。PEGを末端に導入したアルキルホスホン酸は、 PEG 鎖長とアルキル鎖長を最適化することで TiO2 粒子の溶媒への分散性を制御でき、また、ホスホン酸基をアミノ基に変更することでAg粒子の表面修飾剤として活用できる。
さらに、溶媒中の粒子に吸着した表面修飾剤に関するNMR を用いた評価、およびAFM コロイドプローブ法を用いることによる、粒子間に作用する力を直接測定することができる技法についても説明があった。
 
2)「Mixing the Unmixables」  東北大学 材料科学高等研究所 教授(東北大学ディスティングイッシュトプロフェッサー) 阿尻雅文先生
本講演については、超臨界技術を活用した抽出や粒子合成について説明をいただいた。
身の回りにおいてはコーヒーのカフェイン抽出、マヨネーズのコレステロール抽出などにおいて超臨界技術が利用されているが、超臨界技術を反応と融合させることで、他の方法ではできないものづくりが可能となる。例えば、超臨界水を用いるとエーテル結合やエステル結合等を有する高分子を分解することができる。TDI残渣を超臨界水中で分解すると TDI の中間原料である TDA が得られるため、これを再利用するケミカルリサイクルが実用化されている。また、超臨界水を用い、ナノレベルの金属酸化物を容易に合成できる。金属塩水溶液を超臨界状態にすると水熱反応が速く進行し、かつ、金属酸化物の溶解度が低いため、極めて高い過飽和度が与えられて金属酸化物はナノ粒子として析出する。このとき、レイノルズ数(混合速度)を上げることで粒子径を制御できる。更に、有機分子を添加した超臨界水中で水熱合成を行うと、有機分子に修飾された金属酸化物粒子を得ることができ、溶媒への高濃度分散が可能となる。
 
3)「微粒子・ナノ粒子の研究を振り返って、宮原先生を思い出しながら」   前代表幹事 福井武久様
噴霧熱分解法、機械的手法、アークプラズマ法、スプレーフリーズドライ法を用いた粒子合成法とその応用事例についてご説明頂いた。
噴霧熱分解法は、目的成分を含む溶液を噴霧し乾燥・熱分解して微粒子を得るプロセスであり、Ni(触媒)をコア部、YSZ(電解質)をシェル部とする複合粒子や LaSrMnO3(触媒)とYSZ(電解質)が高分散した複合粒子が得られる。これらを用いた固体酸化物型燃料電池は、耐久性に優れた特性を有する。機械的手法は圧密とせん断力により粒子を複合化するプロセスであり、Ni粒子にCaOを均一に被覆することができ、溶融炭酸塩型燃料電池の電極として利用される。アークプラズマ法はアークプラズマを熱源として金属を加熱蒸発させて微粒子を得るプロセスで、本手法で得られるFeナノ粒子は純度が高く、磁気特性に優れ、磁気機能性流体に利用される。スプレーフリーズドライ法は目的成分を含む溶液を噴霧し、凍結乾燥して微粒子を得るプロセスであり、Liイオン、Feイオン、コロイダルシリカ、カーボン粒子、グルコースを含む溶液から得られる Li2FeSiO4粒子は炭素に被覆されており、二次電池の活物質に利用される。
 

以上

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