活動報告
微粒子ナノテクノロジー分科会 報告
2022年2月7日
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ビューラー株式会社 粉砕・分散事業部 杉山 寛様のご講演
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神戸大学 大学院工学研究科 准教授 菰田悦之様のご講演
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法政大学 生命科学部 教授 森 隆昌様のご講演
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微粒子ナノテクノロジー分科会 神谷コーディネータより開会の挨拶
2021年10月21日、「濃厚系スラリーの基礎とその分散について」をテーマとし、2021年度第1回微粒子ナノテクノロジー分科会をオンライン形式にて開催しました。オンラインでの開催でもあり、昨年と同様に主に若手技術者を対象とし、レベルアップと育成を目的とした講演を3演題設定しました。講演はテーマとした濃厚系スラリーの基礎からその評価、製造にいたるまで多様な内容にて構成され、おのおのの講演後にはさまざまな視点からの質疑応答が行われました。さらに、講演終了後に開催した総合討論・座談会においては、より実践的かつ深い内容の議論が行われるなど、貴重な機会となりました。
以下にその概要について報告します。
講演①「濃厚系スラリーの基礎と沈降・濾過挙動」 法政大学 生命科学部 教授 森 隆昌 様
粒子加工プロセスにおいてスラリーは粒子を密に充填でき、流動性がよく扱いやすくなる。スラリーの内部構造は光学顕微鏡などにより直接観察でき、さらにその分散状態はコロイドプローブAFM法による粒子間力、電気泳動法などによるゼータ電位を用いて解釈できることを基礎理論とともにご紹介いただいた。
次に、粒子分散状態と沈降・濾過挙動との関係についてご紹介があった。沈降法による粒子径分布測定方法として、アンドレアゼンピペットやX線透過型粒子径分布測定がある。また、噴霧乾燥粒子の形状に対し分散状態に起因する局所的な堆積状態が影響することや、分散状態が濾過速度やケーク平均充填率に影響することを、理論式とともに分かりやすくご説明をいただいた。
講演②「レオロジーから読み解くスラリーの内部構造」 神戸大学 大学院工学研究科 准教授 菰田 悦之様
はじめに、粒子分散液の分類と、その評価に用いられるさまざまな手法について示し、その中でも重要な手法であるレオロジーによる評価について、基礎的な理論から丁寧に御説明をいただいた。重要な事項として、スラリー粘度は大きくは粒子濃度、分散媒粘度、粒子の凝集状態に依存すること、および評価にあたっては分散媒の粘度測定および完全分散粘度の試算を行うことと御説明をいただいた。 さらに、粘弾性測定においては、弾性についてはスラリー中に内在する粒子の架橋構造が、粘性については見かけの粒子体積分率に強く依存する。
講演後半においては、実際の電極スラリーを例とし、レオロジー評価結果から、スラリー中において発生している現象についてわかりやすく御紹介をいただいた。さらに、レオロジー特性に加えインピーダンスを測定することがさらなる構造の理解に有効であった事例についても示された。
スラリーは複雑な系ではあるが、多種多様な手法による分析および理論を駆使することにより、その理解を深めることが可能であることを学ばせていただいた。
講演③「濃厚系スラリーの分散装置について」
ビューラー株式会社 粉砕・分散事業部 杉山 寛 様
湿式粉砕、分散技術において、最適解を得るための要素であるマシン、プロセス、製品処方のうち、マシンを中心に事例を含む実用的な技術説明をいただいた。
濃厚系スラリーに適したマシンとして、狙う粘度や粒子径によりビーズミル、3本ロール、エクストルーダーを使い分ける。3本ロールは、ロール間の狭いギャップを通過する際にロールの回転速度差から生じるせん断力により粒子がサイズダウンされる。ビーズミルは、攪拌されたビーズが凝集粒子へ衝突することによりサイズダウンされる。粉砕室内のビーズの均一な分布が均一な粒度分布につながるため重要である。
あわせて、ビューラー社製品による高循環処理の利点もデータを用いて説明いただいた。エクストルーダーは、スクリューエレメントによるギャップでせん断力がかかる仕組みである。この混錬時の固形分濃度上昇と、得られる粒子径の関係についてもデータで御紹介をいただいた。