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合同分科会 報告(計装測定・微粒子ナノテクノロジー分科会)

2022年12月22日

  • 森隆昌先生の講演
    森隆昌先生の講演
  • 測定機メーカーからの製品紹介
    測定機メーカーからの製品紹介
  • 測定機メーカーからの製品紹介
    測定機メーカーからの製品紹介
  • 司会の阿川さん/測定機メーカーからの製品紹介
    司会の阿川さん/測定機メーカーからの製品紹介
  • 武田真一先生の講演
    武田真一先生の講演
  • 後藤先生による開会挨拶
    後藤先生による開会挨拶

11月25日・28日に2022年度計装測定分科会・微粒子ナノテクノロジー分科会合同にて、「液中微粒子の基礎現象と特性評価の最新動向」をテーマに分科会本会合を開催しました。主に若手粉体技術者のレベルアップと育成を目的とした基礎を学べる3講演を設定しました。
 
 

1日目は、計装測定分科会が担当し、液中微粒子の計測方法について、2人の専門の先生方からご講演頂くと共に、計測器メーカー6社からも、製品紹介のプレゼンを行って頂きました。
2日目は、微粒子ナノテクノロジー分科会が担当し、液中微粒子に関する基礎的な部分を3人の講師の先生に、詳しくご説明頂きました。粒子の帯電状態と評価の基礎理論、粒子帯電の評価計測技術、粒子の帯電を利用した成膜プロセスの基礎と応用に関する3講演に続き、総合討論・座談会が行われた。各講演に対し、様々な視点からの質疑応答、議論がなされ、本分野に対する理解を深める貴重な機会となりました。
以下にその概要についてします。
 

【1日目】
〇講演1「濃厚スラリーの粒子分散状態が沈降静水圧及び浸透圧に及ぼす影響」
法政大学生命科学部環境応用化学科 教授 森隆昌 先生
法政大学の森隆昌先生からは、濃厚系スラリーの粒子分散状態を評価するために、スラリーの沈降静水圧及び浸透圧を測定する方法をご紹介いただいた。単成分スラリーの沈降静水圧の変化はセラミックス湿式成形プロセスの1つであるシート成形における成形体充填率とよい相関があるとのことであった。
 

〇講演2「 遠心沈降分析法を用いたナノ粒子の特性評価-粒子径分布測定を中心として- 」
武田コロイドテクノ・コンサルティング株式会社 武田 真一 先生
武田 真一先生からは、遠心沈降法を用いて、濃厚スラリーの粒子径分布を求める方法と、ハンセンパラメータを用いて粒子表面の濡れ性を評価する方法について、ご説明頂いた。
 

測定機メーカーからの製品紹介プレゼン
LUM Japanから遠心沈降法による測定装置であるLUMi Sizerを、堀場製作所からは、同じく遠心沈降式粒子径測定装置であるPartica CENTRIFUGEを、島津サイエンス東日本からは、X線を用いた自然沈降式の粒度分布測定装置を、マイクロトラック・ベルからは、流動電位測定装置であるSTABINO ZETAを、アントンパールジャパンからは、レオメーターを、スペクトリスからはレーザー回折式粒子径分布測定装置とDLSの装置の紹介を行った。
 
 

【2日目】
「液中微粒子の帯電・電気泳動・ゼータ電位の評価」
広島大学大学院 先進理工系科学研究科 助教 深澤 智典 様
粒子懸濁液のマクロな物性の評価・予測において重要となる粒子の帯電状態の理解に関する基礎理論と評価に関してご説明頂いた。
はじめに、粒子の帯電機構、帯電粒子の周囲に形成される電気二重層の4モデル、拡散電気二重層の厚みの求め方についての基礎理論をご説明頂き、続いて、粒子の帯電状態の評価として電気泳動とゼータ電位に関する基礎理論をご説明頂きました。
ゼータ電位は、溶液中の微粒子の周りに形成する電気二重層中の、液体流動が起こり始めるすべり面の電位であり、溶液中の微粒子の凝集・分散制御、および特性評価の重要なパラメターである。ゼータ電位は電気泳動移動度から算出するが、電気二重層厚みに対する粒子の大きさによって適切な計算式を選択する必要がある。
また、低塩濃度の電解質溶液中での粒子のゼータ電位測定では、0.01mol/L程度のpH緩衝液を用いるなど、測定上の注意点もご紹介頂いた。
 

「液中帯電粒子の電気泳動現象を利用したセラミックス成膜プロセスの基礎と応用」
物質・材料研究機構 機能性材料研究拠点 光機能分野 微粒子光学グループ グループリーダー 打越 哲郎 様
コロイド粒子を電気泳動させて、電極基板上に堆積させる電気泳動堆積(EPD)法の基礎と応用についてご説明頂いた。
はじめに、EPDのメカニズムについてご説明頂いた。ポイントは電圧印加による電極近傍付近の溶媒のpH変化であり、溶媒のpHと粒子の等電点が一致するときに粒子がよく堆積する。更に、Mg や Mg-Si-Al の水和反応を活用することで高強度の膜を形成できる。
次に、コロイド結晶膜の形成過程のメカニズムをご説明頂いた。基板上に粒子の濃縮層が形成された後、乾燥過程で粒子の再配列が起こる。また、粒子の堆積を制御することで、均一膜、不均一膜、積層膜など様々な膜を形成することができる。
最後に、金属原子クラスターを用いて形成した膜の湿度応答、光応答についての紹介があり、EPDにより形成された膜のセンサーへの利用可能性をご紹介頂いた。
 

「液体中における粒子帯電の評価計測技術紹介」
大塚電子株式会社 稲山 良介 様
コロイド粒子の分散・安定性の定量的な指標となるゼータ電位の測定方法を体系的にご紹介頂いた後、電気泳動法に分類されるレーザードップラー法についてご説明頂いた。
電気泳動している粒子にレーザー光を照射すると、粒子の電気泳動速度に応じて散乱光の周波数がドップラーシフトするため、このシフト量から電気泳動移動度を求める方法。電荷の異なる粒子が混在する場合は複数のピークとして検出できる。
続いて、ゼータ電位測定のノウハウをご紹介頂いた。特に誘電率の低い非水系溶媒系の測定ではセル選択にも注意が必要。また、試料・測定準備の注意点として、ゴミや泡の混入防止、粒子濃度や試料温度の調整などを紹介頂いた。
最後に、レーザードップラー法を用いた測定事例として、ゼータ電位及び粒子径の変化に対するpH、分散剤添加濃度、塩添加の影響について、また、異なる活性剤による分散安定性やカーボンナノチューブの分散性の測定データをご紹介頂いた。
 
 

当初、両分科会は別々に行事を予定していましたが、お互いに計画していたテーマおよび開催時期、開催方式が近いことが判明し、急遽、合同開催といたしました。液中微粒子について基礎から最新の研究まで、幅広く包括的に学べる良い機会になったのではないかと思われます。

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