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リサイクル技術分科会 報告

2025年12月22日

  • ①太屋岡先生の講演風景
    ①太屋岡先生の講演風景
  • ②セメント製造フロー
    ②セメント製造フロー
  • ③見学風景
    ③見学風景
  • 集合写真
    集合写真
2025年12月10日、第2回分科会として、リサイクル分野では多くの廃棄物を受け入れ、リサイクルへの社会的貢献が大きいセメントに焦点をあてた見学・講演会を日鉄高炉セメント株式会社様のご協力を得て、開催いたしました。以下に報告いたします。
■講演会:「画像を用いたAI によるリサイクル材料の選別」 北九州工業高等専門学校 生産デザイン工学科 太屋岡 篤 氏
画像を用いたAIによるリサイクル材料の選別について講演を頂いた。先ず、AI技術の歴史とディープラーニング(深層学習)の革新性について、現在は第3次AIブームの只中にあり、従来の人間が「耳の形」などの特徴量を手動で定義する手法から、コンピュータが大量の画像データから自動で最適な特徴量を抽出・生成する手法へと進化しているとの事。
今回の講演では、リサイクル材料をAIで選別するための画像処理技術についても説明頂いた。具体的には、RGBやHSVといった表色系の基礎に加え、試料画像と背景画像の差分(絶対値)を取ることで対象物のみを正確に切り出す「差分画像」の作成手法など、選別の前処理となる重要技術を紹介されている。また、開発手法として、生成AI(ChatGPT)を活用したプログラミングとして、ChatGPTに指示を与えるだけで手書き数字認識を行うCNN(畳み込みニューラルネットワーク)のコードを生成し、わずか5回の学習(エポック)で約98.6%という高精度な正答率を実現できることが示されたとの事だった。(写真①参照)
 
■講演会:「セメント・コンクリートのCO2削減への様々な取り組み」 日鉄高炉セメント株式会社 技術開発センター センター長 檀 康弘 氏
セメント・コンクリート分野におけるCO₂削減への様々な取り組みについて講演を頂いた。先ず、セメントの低炭素化について、一般的な「ポルトランドセメント」と比較し、鉄鋼製造時の副産物である高炉スラグを利用した「高炉セメント(B種)」は、CO₂排出量を約4割削減できる実績がある。現在の国内需要の90%以上はこれら2種で占められており 、CO₂削減には高炉セメントへの置き換えや、高炉スラグ微粉末の混和材利用が、技術・コストの両面で現状最も有効な手段であるとの事。
今回の講演では、政府や業界の動向として、国土交通省の「土木工事の脱炭素アクションプラン」にて低炭素型コンクリートの使用原則化が進められている点や 、日本建築学会のJASS 5改定により「低炭素等級」が新設された点など 、社会実装に向けた動きが加速している現状を説明頂いた。また、原料となる高炉スラグの安定供給については、現在は台湾や米国などへ多く輸出されているが、これを国内向けに転換することで、仮に国内の全セメントが高炉セメントに切り替わっても供給量は賄える計算になるとの事 。さらなる削減策として、コンクリートにCO₂を固定するCCU技術(カーボンキュアやSUICOM等)の開発・実用化にも力を入れているとの事だった。
 
■見学会:日鉄高炉セメント㈱ 高炉スラグを利用したセメント製造施設
日鉄高炉セメント様のセメント製造施設の見学をさせて頂いた。
製造工程は、「原料工程」、「焼成工程」、「仕上工程」があり、実際の工程を近傍で見学させて頂き、また同社スタッフによる詳細説明を頂いた事で、工程毎のポイントや役割について理解する事が出来た。特に「焼成工程」のメイン大型設備であるサスペンションプレヒーター(予熱装置)と、約1450℃で焼成するキルン(回転窯)は、大迫力で、至る所にノウハウが反映されている点があり、大変勉強になった。(写真②、③参照)
 
今回の分科会は、カーボンニュートラルに向けた取り組みと、AIを用いた技術をマッチさせ、昨今の旬なテーマを組み入れた分科会を開催する事が出来た。今後もこういった環境側面と技術面にフォーカスした分科会を計画していきたいと思う。

以上

本分科会の開催案内は、こちらよりご確認いただけます

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