活動報告
リサイクル技術分科会 報告
2024年11月26日
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見学会(釧路火力発電所)
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講演会①(北海道大学 伊藤先生)
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講演会②(釧路コールマイン 松本氏)
2024年11月13日、第2回分科会として、釧路火力発電所の見学会とカーボンニュートラルやカーボンリサイクルに関する講演会を開催いたしました。以下に報告します。
■見学会:「釧路火力発電所(バイオマス混焼施設)」 見学先: 株式会社 釧路火力発電所
同社は、釧路市の基幹産業のひとつである「石炭」の有効活用を図るために建設された発電所であり、2020年12月に商用運転を行った企業である。発電方式としては、石炭・バイオマス・廃棄物などの省資源、低炭素に貢献した燃料を活用可能なValmet/JFE製のCFBボイラによる蒸気タービン式発電であり、発電能力:11.2万kW/送電:10万kWとなっている。
同発電所の最大の特長であるCFB(循環流動層式)は、主要燃料を石炭の他にバイオマス燃料(PKS・木質ペレット)を活用(石炭:70%、バイオマス30%)し、また水源は公共下水道処理水と釧路コールマインの坑内水を使用するなど、昨今世界的な取り組みテーマとなっている環境面に配慮した取り組みを行っているとの事。今後は、更なる脱炭素を図る為、バイオマス比率の向上ならびに廃棄物の付加価値化を高めていく方針であるとの内容であった。
また、『地域に根ざした発電所』を掲げ、地域貢献活動(植樹、ボランティア、学校との連携)にも大変力を入れており、地域と一体となり、ゼロカーボンを目指していく取組み方針が素晴らしかった。
■講演会:「カーボンニュートラル化と発電技術の多様化ー我が国の金属資源の開発・循環への影響」
講演者: 北海道大学 工学研究院 環境循環システム部門 教授 伊藤真由美 氏
カーボンニュートラルと金属試験の開発と循環を絡めたテーマにて講演を頂いた。
まず石炭火力の高効率発電について、ハイパーコール(超低灰炭)の製造技術によって発電効率40%→50%まで引き上げたCO2排出量低減効果について説明頂いた。
また、脱炭素社会における金属資源循環について、日本での金属生産は世界3位であるが、原料(鉱石)のほとんどを輸入に頼っているが、昨今の自動車EV化や半導体製品の急増に伴い、世界的に非鉄(Cu等)の需要が増大している為、脱炭素に逆行した生産を行わなければならないとの事。そうした背景から、鉱石の金属濃度を向上させる技術や、都市鋼材系のレアメタルリサイクル技術によって、効率と資源循環からカーボンニュートラルへ適用していなかければならないと説明頂いた。
特に2050年を見据えた上で、大学・業界(企業)・学会・国(JICA,文科省他)と連携し、「資源系教育コンソーシアム:SREC」を設立し、資源系人材の工学教育・育成に注力し、中長期でのカーボンニュートラル対応できるような教育取組みを行っているとの事であった。
■講演会:「釧路コールマインのカーボンリサイクルの取り組み」
講演者: 釧路コールマイン株式会社 専務取締役 松本裕之 氏
同社は、北海道釧路市に本社を置く、日本唯一の坑内掘石炭生産会社であり、採掘および販売事業、研修事業、国からの委託事業、新規事業分野の開発・企画などを行っている。
本講演では、石炭採掘会社であるがゆえ、積極的に取り組んでいるカーボンリサイクル技術・実証・内容について講演頂いた。
炭坑は、採掘跡や不要坑道の安全性確保(自然発火やメタンガス充満、地盤沈下リスク等)すべく、埋め戻しを行わなければならない。そういった背景から、埋め戻しには火力発電所等で発生する焼却灰を主成分として用いてリサイクル活用しているが、充填剤にCO2を混ぜて炭酸塩化する事でCO2のカーボンリサイクルを行う技術開発を行っており、試験成果は良好との事であった(NEDO取組み)。
また、今後の展開として同技術を用いて、従来の石炭採掘では対象にならない深部の石炭層にCO2とN2を注入し、メタンガスを回収するシステム(ECBMR)の検証を現在行っている。将来的には、回収したメタンから水素とカーボンナノチューブの製造まで実用化したいとの事で、積極的にカーボンリサイクルに取り組んでいる素晴らしい内容であった。
今回の分科会は、釧路という石炭を基幹産業とした地域での見学・講演会を通して、カーボンニュートラルやカーボンリサイクルの技術とその必要性、今後の展開について理解の深まる、非常に良い分科会でした。
以上