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微粒子&晶析合同分科会 報告

2019年12月23日

  • <晶析分科会>Dr. Jonesのご講演
    <晶析分科会>Dr. Jonesのご講演
  • <晶析分科会>黒田先生のご講演
    <晶析分科会>黒田先生のご講演
  • <晶析分科会>Prof. Floodのご講演
    <晶析分科会>Prof. Floodのご講演
  • <晶析分科会>新井先生のご講演
    <晶析分科会>新井先生のご講演
2019年11月20日、INCHEMTOKYO2019内において、粉体・ナノテクノロジー国際フォーラム IPNF 2019 (International Powder and Nanotechnology Forum)と題し、微粒子ナノテクノロジー、晶析、粒子加工技術、粉体シュミレーション技術利用の4分科会合同にて2日間にわたり講演会を開催しました。
1日目、微粒子ナノテクノロジー分科会と晶析分科会は合同にてドイツの研究機関における先端研究事例4件、および国内研究機関での事例3件の計7件の講演を行いました。
<微粒子ナノテクノロジー分科会報告>
3件が微粒子の新規調製、分級方法からその加工、利用手法に関する内容、4件がタンパク質の基本的物性である溶解度や自己組織化の現象とこれらをベースとした晶析技術に関する講演とし、いずれも最新の研究内容についての発表となりました。今回は民間企業からの講演はなく国内外研究者のみでしたが、最新の研究成果の内容が多く、聴講者にとっても刺激のある得るものが多かった内容であったと考えています。

講演1 Challenges in Nanoparticle Technology -New Prospects in Flow Synthesis and Property Classification
Prof. Wolfgang Peukert (University of Erlangen-Nuremberg, Germany)
ナノテクノロジーの実用化には、ナノ粒子の大量合成と粒径の分級が重要となる。ナノ粒子の量産化には連続合成が不可欠であり、流体のフロー混合プロセスによる連続析出合成法およびクロマトグラフィーを原理とする粒子分級法の開発状況が紹介された。連続合成法はスケールアップが検討されており、粒子分級法では、50nm以下のサイズや各種濃度においてナノ粒子のタイプ別の効率的な分級が可能であり、非常に興味深い情報を得ることができた。
講演2 Assembly of Nanoparticles by Wet, Dry and Hybrid Processes
Prof. Takafumi Seto (Kanazawa University)
ナノ粒子を産業的に利用するには、合成された粉体状のナノ粒子を分散、積層等により、
二次加工する技術の蓄積、確立が求められている。本講演では、主に乾式プロセスでの各種粒子堆積法(エアロゾルデポジション法など)について紹介するとともに、湿式プロセスとのハイブリッドプロセスの一種となる静電噴霧堆積(ESD)法が、その特性から加工速度などの課題に対して有効となりうることが示された。
講演3 Doing Business in Chemical Nanotechnology:From Molecules to Product Applications
Prof. Sanjay Mathur (University of Cologne, Germany)
ナノ材料を応用するためには、その構造体(粒子径、形体、構造や表面状態)の制御が重要である。ケミカルプロセスを活用したビルトアップ法による、粒子の表面修飾、形体の制御(粒径、球形、チューブやワイヤなど)及び粒子構造制御(コアシェルや中空状)について紹介された。それらのケミカルプロセスの更なる最適化やスケールアップが今後の課題である。

<晶析分科会報告>
講演1 Protein Crystallization: Fundamentals and Recent Developments Dr. Matthew J. Jones (Patheon by Thermo Fisher Scientific Inc.)
タンパクを精製する方法は、カラム精製が一般的であるが、タンパク質の晶析がうまく成立すれば経済性が出ることなどの話があった。講演者の実験結果を元にタンパク質の晶析現象についての深い考察があり、来場者からは多数の質疑、議論があった。
講演2 Engineering Aspects for Protein Crystallization Prof. Adrian Evan Flood (VISTEC)
晶析現象を考える上で、その物質の溶解度を理解することは必須である。そこで、タンパク質の溶解度について、黒田先生より講演いただいた。タンパク質の溶解度はある濃度を境に高濃度領域では、長時間置く事で沈殿が生じることがある。したがって、熱力学的に安定な溶解度を求めるときには注意を要することが分かった。またタンパクに修飾するアミノ酸残基によって、溶解度が変化する内容などについての紹介があった。
講演3 Engineering Aspects for Protein Crystallization Prof. Adrian Evan Flood (VISTEC)
タンパク質の工業晶析に向けて内容であった。実際に晶析する液は不純物が多数含有されている可能性がある。そのため不純物共存系での晶析現象を解説いただいた。また、最近のタンパク質晶析の事例についても紹介されて、聴講者にとって情報収集として最適な講演内容だった。
講演4 elf-assembling Supramolecular Nanostructures Constructed from de novo Protein Nano-building Blocks
Prof. Ryoichi Arai (Shinshu Univ.)
タンパク質を過飽和状態にすると、晶析ではなく核化することも生じる。そこで、タンパク質晶析を施すには並べる(自己組織化)することが重要であると考えている。講演では人工タンパク質であるが、その人工タンパク質を用いたときの構造体の集積の様子を発表された。構造体をどのように調べるかについても最新の分析方法を紹介されて、アカデミックな内容ではあったが、非常に興味深い内容であった。

4人の講師の方々からタンパク質の基本的物性である溶解度や自己組織化の現象について紹介いただき、それらをベースに、さらにタンパク質の晶析技術についてご講演いただきました。これまで低分子化合物をメインに扱っていた内容から少し内容を変えたが、最新の研究成果の内容が多く、聴講者にとっても刺激のある内容であったと考えます。今後もよりたくさんの方々に参加してもらえるよう企画・運営を行っていきたいと考えています。

以上
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